May 1st, 2016

英検1級 語彙との闘い


私が今の仕事をしているのはひとえに英検1級のおかげです。

2003年の4月、一番下の子が幼稚園の3年保育に入園すると同時に私は自分の勉強を始めました。

最初、「英語を仕事にしよう」などという気持ちはこれぽっちもなく、10年間子育てだけしてきてちょっと乾いたスポンジのようになっていた自分に外から何か栄養をあげたかっただけかもしれません。中途半端な帰国子女だった私は文法も語彙も本当に穴だらけ(今もそうですが)だったので、サイマルに通って少し話す機会を作るとともに、一念発起して「半年後に英検1級合格」というかなり厳しい目標を立てました。その時点で持っていた級は中学で取った3級でしたから、ずいぶん欲張りな目標でした。とにかく語彙が足りなかったので、毎日30個覚える努力をすることにしました。もちろんそうして翌日には半分以上は忘れているのですが、それでも毎日やれば確実に覚えることができます。最終的な計算で行くと平均して毎日10単語新しいものを覚えて7カ月で2000語増やしました。

子どもたちが幼稚園や学校に行っている間、家事の合間にひたすら調べて、覚えました。売っている単語帳を使うのは簡単なのですが、私は書くという作業を通すと覚えやすいタイプでしたし、実際覚えた単語を使えるようになるには自分で調べて例文も複数当たってみる、ということが必要でした。面倒でも、1級に必要とされる単語のリストを書き出し、自分で辞書で調べ、例文を探し、さらに自分で例文を作ってみる、と手間をかけました。手間をかけるとより覚えることができたからです。

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7冊のノート

そうやって2003年の11月のテストでの合格を目指しました。半年後の受験までにノートが約7冊、およそひと月に大学ノート1冊分を覚えました。忘れてしまって繰り返し調べたものもあるので、語彙数的には2000程度しか増やせませんでしたが。幼稚園の保護者会の待ち時間も単語を覚えていたりしたので、たぶん周りから見て「変わったお母さん」だったと思います。単語が1~2000番台までナンバリングされて日付も入っているこのノートは自分にとってはいつもこの道を歩き出した時のスタートを思い出させてくれる大事なものです。

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そうやってノートは出来ていきましたが、また端から忘れていくので、今度はノートで調べたものをすべてワードに打ち、持ち運びやすいように印刷していつもバッグに入れていました。何度覚えてもどうしてもいつも忘れてしまう単語もありました。あれはなんでしょう。言葉にも相性があるのかもしれませんね。

英会話学校はモチベーションが下がった時

英会話学校は自分のモチベーションが下がりがちなときだけ通い、自分で学習を進められるときは敢えて通いませんでした。時間は有効に使いたかったので、外部からの刺激が必要な時だけ利用しました。モチベーションが低いときは同じ目標を持つクラスメートがいるところで学習すると気持ちを維持しやすくなりますのでお勧めです。

1級でリーディングやリスニングの対象となるトピックに関しては子育て中にぼ~っと見ていたDiscovery Channelがものすごく役にたちました。最新の科学系の研究内容や、様々な自然現象、歴史上のできごとなどについての本や番組が好きだったので、1級の問題に出てくるようなトピックについてはかなり基本的な知識がありました。野生動物の生態なども結構知っていたので、英検1級だけでなく、TOEFLにも役立ちました。サイマルのクラスメートでそういったことに興味がない友人がいて、同じく1級をめざしていたのですが、リスニングの音声が半分くらい進んだところでもなかなか何の話なのか把握できないようでした。英語力の問題というよりも知識の問題でした。英語のテストとはいえ、実は英語の能力だけが試されているのではない、というのはどのテストも一緒ですね。

NHK国際研修室

そうして2003年秋の試験で1級に合格することができました。初回受験だったからか、ラッキーにも優秀賞を後からいただくことができました。この合格は私にとっては大変大きな自信になりましたし、私を次の目標へと目を向けさせてくれるきっかけにもなりました。さらに勉強を進めたいと考えていた私は、いろいろ調べているうちに「NHK国際研修室」というウエブサイトにたどり着き、「英検1級合格が受験資格(当時)」と知ってこちらに挑戦することにしました。

帰国でない方にはわからないかもしれませんが、帰国子女であるというのもなかなか大変で、常に自分の英語を周りから評価・ダメ出しされている気分になりがちですし、人によっては大きなコンプレックスを抱えています(まさに私がそうでした)。私は英語という物差しで自分を測られることを嫌悪した大学時代を過ごしたので、英会話学校のレベルチェック、英検1級、NHK国際研修室の試験、と自分の英語能力を外から評価判断される場所に自ら出向く、というのは少し前の自分にとっては考えられないほどの勇気ある行動、大きな進歩でした。他の人にとっては大したことが無いことでも、私にとっては人生の一大転機でした。今でもサイマルに初めてレベルチェックを受けに行くことを決めてバスに乗った日の緊張が忘れられません。たった10分のバスに乗っている時間が永遠のようでした。

NHK国際研修室に入った私は同通の訓練とニュースライティングを2年ほど勉強しました。ここでもダメ出しの嵐ですから、だんだんとそれにも慣れていきました。とても厳しい学校で、進級できるのはほんのわずかです。、優秀ならNHKで将来的にお仕事もできますが、当時でも1/700のチャンスと言われていました。この学校で学んだ内容は今でも私のティーチングに欠かせない基礎になっています。私はここで学びながら自分の取りあえずの最終的な目標をケンブリッジ英検のCPE (C2の最高レベル)に置いていました。

この先のさらなるCPE試験放浪記はまたどこかでゆっくり書きたいと思います。

テストを積極的に利用して英語を磨く

私はテストや試験というものを利用しながら少しずつ自分のコンプレックスを克服し、自分の英語を磨いてきた経験を持っています。海外駐在で仕事をしていた時よりも、日本で試験準備を通して努力した日々のほうがずっと自分の英語力を上げられた、とはっきり言えます。そのような経験を通して、テストを「自分を評価するもの・ダメ出しするもの」と考えずに、「自分の力を磨く手段になってくれるもの」というふうにいつの間にか考えるようになっていました。そしてその考えは今も変わりません。日本のように英語が外国語環境(外に出てもだれも英語を話していない環境)では受信力・発信力を磨くには上手にテストを利用するべきだと考えていますし、生徒さんにもそのようにお勧めしています。私は生徒さんにあまり甘いことを言うのは好きではありません。努力しないで簡単に習得したい、誰だってそう思います。でも出来ないんです。努力しないで出来るようになるくらいなら、どうして書店の棚は英語の学習本で溢れかえっているのでしょうか?
難しいことを理解しやすいように工夫して伝えることは必要ですが、それと「習得は簡単にできる」と言ってしまうのとでは天と地ほどの差があります。

日本に居ながら英語を上達するにはいかに「モチベーションを維持するか」「具体的な目標を設定するか」「毎日の地味な努力を惜しまないか」の3つに対して自分が工夫していくしかありません。英語は簡単だという人を信用してはいけません。全然簡単じゃないですから。でも、正しく努力すれば必ずできるようになります。

2003年に英検1級を目指さなかったら今の私はないです。本当に目指して良かったです。皆さんも是非、身近な試験からチャレンジしてみてくださいね。

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