できる人はストレスと上手く付き合っている

更新日 : 2018年11月16日

ストレスは嫌なものだと思われがちですが、実は、ストレスフリーの生活は成長も適応もない人生の袋小路、もう先がありません。今回のブログは、ストレスは取り扱い次第で以外に役に立つというお話です。

みなさんは、ホメオスタシス(homeostasis;生体の恒常性)という言葉をご存知ですか?Homeostasisとは、エアコンのサーモスタットが設定温度を一定に保つように、私たちの身体が体温や血圧、体液の浸透圧などを環境にかかわらず一定に保つ力、つまり、設定されたベースラインを一定にする力です。ところが、人間は生まれた瞬間から様々なチャレンジに立ち向かい、乗り越えることで成長します。例えば、赤ちゃんから大人へと成長する過程で、体温は下がり、血圧は上がり、運動能力や感情制御力が上がります。つまり、人間は、ホメオスタシスを打ち破ることで身体が成長し、脳機能が発達するのです。その原動力がアロスタィシス(allostasis)です。

Allostasisとは、 ストレスの力を借りて、次に起こると予測される事態に備えて新しいベースラインを作る能力、例えるなら、人工知能(AI: artificial intelligence)を搭載したサーモスタットのようなものです。AIは住人の好みの温度や生活リズムを学習して、帰宅に合わせて最適の温度に調節したり外出時にはエアコンを切ったりするように、ビジネスパーソンが、新人の頃には苦手だった電話対応が苦にならなくなり仕事が楽しくなるのは、allostasisによって新しいhomeostasisが作られるからです。一方、どうしても職場に馴染めない、あるいは頑張っているのに仕事がはかどらない状況は、allostasisが新しい環境への適応に失敗し、homeostasisを作れないことから起こります。そのことが長期化すると慢性ストレスから心身に支障がきたす(wear-and-tear on the brain and body )ようになります。この状態をアロスタティックロード(allostatic load)と言います。

Allostasis とallostatic loadには4タイプあります。
1. Repeated “hits” from multiple stressors. (色々な厄介ごとがひっきりなしに起きる)
2. Lack of adaptation. (適応できない)
3. Prolonged response due to delayed shutdown. (ストレス反応が収まらない)
4. Inadequate response leads to compensatory hyperactivity of other mediators. (誤ったストレス反応から別の内分泌系を活性化させる)

Allostasisがallostatic loadに変わると、胃腸障害、睡眠障害、高血圧、高脂血症、心疾患、さらには自己免疫症などを発症します。あなたの職場にも、太ってなくてもお腹だけポッコリと出ている人はいないでしょうか?Allostasisが長期化してきている兆しです。

Allostasisをallostatic loadに変えないために、最近アメリカで注目されているのがアクティブリカバリー(active recovery)、身体を動かすことでストレス反応を効果的に鎮静化する方法です。Active recoveryの方法はその人の好みや体力で違いますが、一般的には、最大の70%程度の心拍数を維持しながら30分以上歩く、走る、泳ぐ、自転車に乗る、または、ヨガや太極拳、ダンスを練習するなどが含まれます。楽しみながら心拍数を上げて脳と全身の筋肉を使うと、休息する以上に心と身体がリラックスするため、次なるストレスをうまく処理できると考えられます。

最もいけないことは、何時間も座りっぱなしで業務をし続けることです。忙しい時こそ1時間に一度は立ち上がり深呼吸やストレッチをする、そして困った時には同僚や上司に相談しましょう。こんなちょっとしたことがallostasisを上手に使う「できる人」の秘密かもしれません。

参考文献
1. McEwen BS, Gianaros PJ. Stress- and allostasis-induced brain plasticity. Annu Rev Med. 2011;62:431-45.
2. Ratey, JJ and Manning R. Go Wild: Free Your Body and Mind from the Afflictions of Civilization. Little, Brown and Co. 2014.

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有馬 佳代

有馬 佳代

遺伝学・栄養学博士、管理栄養士。徳島大学医学部栄養学科卒、米国アリゾナ大学大学院博士課程終了。 カリフォルニア大学アーバイン校とサンディエゴ校での研究活動を経て、Kayo Dietを設立、栄養指導、料理指導およびレクチャーなどを日米で展開しています。

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