Beyond native speakers (1) – English as a Lingua Franca というアプローチ

更新日 : 2014年7月23日

 

皆様こんにちは。Q-Leap代表の浅場真紀子です。

Q-LeapのHPのブログは私たち三人の講師がそれぞれ自分の興味のある分野について語ったり、皆さんと経験を共有したりする場にしていければと思っています。それぞれの講師の特徴あるブログ投稿を楽しんで下さい。

 

私は最初このブログを英語とその歴史的、文化的背景に関する話題で書いていこうと思っていたのですが、HPを作成していく過程で自分のメッセージなどを読み返しながら一番皆さんと共有したい話題、「ELFという考え方とアプローチ」に決めました。

 

ELF というアプローチ

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ELFという見慣れない、聞き慣れない言葉について知って頂く前に少し基本的なところから始めたいと思います。ELFとはEnglish as a Lingua Francaの略です。Lingua Francaとは最初は地中海交易時代に使われた商人の間での共通語のようなものだったようです。イタリア語ベースだったとも言われています。つまりLingua Francaはある仕事をする(get things done)ための「共通語」とも言えると思います。ですからELFの視点では、だれでもが英語という共通語の所有者(Owner)です。英語はネイティブスピーカー(これも誰をさすのか定義は明らかではありませんが)がOwnerでそのスタンダードに合わせて行かなくてはならない、という昔の考え方とは全く違います。

 

私は日本人の英語学習を考える時、ネイティブモデルしかないということがとても不幸なことだと思っています。日本人の英語話者の一般的なモデルというものが存在しないので、勢い目標はネイティブになってしまうのですが、あまりに遠くて達成出来る気がしない人も多いのではないでしょうか。それに実際に理論上も真にネイティブと同じになるには生後数ヶ月以内に英語圏に住まないとダメだということが分っています。ですからそもそも絶対になれないものがモデルだという不幸なスタートです。ネイティブを目指す限り私たちは常に「欠陥品」というわけです。

 

多分皆さんはESLとかEFLという言葉を聞いたり目にしたりしたことがあるのではないでしょうか。ESLはEnglish as a second language、EFLはEnglish as a foreign languageの略です。この2つがどう違うのかというと、second language というのは対象となる社会で第一言語についで一般的に使用されている言語を指します。例えば香港やシンガポールではメインの中国語のほかに英語も一般的に使われています。教室の外に出ても英語が人々によって使用されている環境で英語を学ぶことがLearning English as a second languageです。

 

EFLの例は私たちの住んでいる日本です。英語を学校で学びますが、一歩教室の外に出るとほとんど英語を話している人はいません。これがLearning English as a foreign languageの環境です。私は長くアジアに住みましたので、インド人、香港人、シンガポール人、マレーシア人などが英語を話すときの「これは自分たちの言語だ」という自信に満ちた態度がいつも羨ましかったのを覚えています。所謂英語ネイティブが話すものとは発音も、時に文法さえ違うものなのですが、彼らには自信が感じられます。自分たちのsecond languageとしてのモデルだからでしょう。いつか私たち日本人にも日本人としての素敵な英語話者モデルが持てる日が来なくてはいけません。そのために私は今英語を教えているのだと思います。

 

英語をどのような視点で見るか、というアプローチには様々なものがあります。ネイティブの話す英語と私たちノンネイティブの話す英語を比較したりするときに必ず出てくるのがKachru (1992)*という人が提唱したKachruvian Circleです。

Kachruvian Circleとはネイティブスピーカーを中心とした円の広がりで、世界の英語ユーザーを分類しようとする試みで示されました。今ではこの分類の仕方にもELFの観点から多くの疑問が呈されていますが、Kachuru自身もこれは再考されるべきものであって完璧なモデルではないと言っています。ですが、今後のELF関連の記事を理解して頂くためにもまずは基本になるところですので見てみましょう。

 

 

Kachruvian Cricle

Kachru’s Concentric Circles

この図でもやはりNative language, Second language, Foreign languageという分類が使われています。そして私たちの日本は一番外側のExpanding Circleという部分に入っています。英語は言語のT-Rexとも呼ばれ、向かうところ敵無しの共通語で、その使用者(Expanding Circle)は年々広がっています。ネイティブと言われる人たちの人口に比べると圧倒的多数がこのexpanding circleに分類されます。このexpanding circleにおける英語使用の最先端でどのような現象が起きているのかについてはまだまだリサーチが十分にされていない状況です。しかし、言語は使われていく過程でどんどんと変化していくものであるというのは過去の歴史を見ても明らかですので、所謂ネイティブの使う英語とは違うものが産まれつつあるのも事実でしょう。ただ、Seidlhofer (2011)**はその著書の中で、本来はそうして自然に変遷してゆくはずの言語がインターネットの爆発的な普及により逆に妨げられている、ということを書いています。つまり世界中の人たちが同じ情報に同じように便利にアクセス出来る条件が整ったことにより、nativeが彼らの世界の中だけで使っていた英語がどんどんと外に伝わり、ネイティブの使う英語が微に入り細にわたりネット上で普及することによって、「ネイティブらしさ」がより価値を持つようになってしまった、という一部の現実です。SeidlhoferはそれをELF的言語使用を妨げていくものと懸念を表しています。確かに最近本屋さんでは「こんな表現を覚えていつ使うのだろう?」というくらいネイティブ同士でしか必要ないような表現を満載した本が見受けられます。趣味ならいいかもしれませんが、これを押し付けられたらたまりません。私個人はネイティブ間で使われる些末な表現を覚えるよりも自分が獲得した語彙を自由に使って自分の考えを表現していくことのほうに興味があります。

このKachru のCircleはあくまでもネイティブスピーカーが中心の世界観ですが、私が思う日本人と英語との理想的な付き合い方はKachruのモデルのような同心円ではなく、どちらかというとベン図に近いものです。お互い重なりあいながらも独立した関係、というのが望ましいのではないでしょうか。でもここまではあくまでも「在り方」の話であって、ではどうそれ(ELF)を「教えるのか」となると問題は山積どころではありませんし、学者の間でもそこはまだ手がつけられていない分野です。私は学者の結論を待つよりも目の前の学習者の方に必要なツールを提供することの方にずっと興味があるので、それを実現するための場としてQ-Leapという会社を作りました。

何をモデルにし、何を目指して学習していくのか、そこを常に意識し、考えながら教えていきたいと私は思っています。そしてそれは個々の学習者によって違うものであるべきだと思っています。英語をもっともっと自由にクリエイティブに使うBeyond native speakersの域を目指しましょう。

これから少しの間、ブログを通してELFについて少しずつ皆さんと情報を共有していこう思っています。

 

 

*Kachru, B.B. (ed.). 1992, The Other Tongue: English across Cultures (2nd edn.). Chicago: University of Illinois Press.

**Seidlhofer, B. 2011. Understanding English as a Lingua Franca. Oxford: Oxford University Press.

 

 

 

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浅場 眞紀子

浅場 眞紀子

代表取締役Q-Leap
慶應義塾大学卒 コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士号取得 米穀物メジャーCargill, 石油メジャーBPの外資2社に計10年トレーダーとして勤務。その間ChicagoとNYに3年駐在。 現在企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを手がけている。 その他大学、専門学校でTOEIC SW クラス、TOEIC公開講座などを担当中。 2014年 ビジネス英語研修会社 Q-Leap 設立

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