Beyond native speakers (2) – Peer Pressure

更新日 : 2014年8月5日

気が遠くなりそうに暑い日本の夏、ですね。

前回のブログでは英語をどのようなものとして捉えながら自分の道具としていくかということのひとつのヒントとしてEnglish as a Lingua Franca (ELF)というアプローチの基本的な考えをご紹介させて頂きました。私は前回のブログで「ネイティブモデルしかないのは不幸である」と書きましたが、これに少し関係のある出来事を夏休み前に経験しましたのでその事を皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。

Food for thought  - Peer pressure –  語学習得の最大の敵

皆さんはPeer pressureという言葉をご存知ですか?直訳すれば「仲間内からのプレッシャー」です。「同調圧力」とも呼ばれているようです。まあお互いに牽制を掛け合い、同じグループ内に留まらせるためにプレッシャーを掛け合っている状態、と思って頂けると良いと思います。これは外国語、特に英語を学ぶ上で非常に大きな障害になっています。今はどうか知りませんが、かつてまだ帰国子女という存在が珍しかった頃、帰国の子が日本の学校に戻ってから英語の時間にあまりに流暢に発音すると「なんだ外人のマネをして」とか「日本人のくせに」といったプレッシャーをクラスメートからかけられてその生徒はだんだんと日本語的な発音しかクラスでしなくなっていく、または登校が難しくなる、仲間はずれにされる、という報告が多く上がる時期がありました。折角のお手本を「出る杭は打たれる」の諺そのままに皆で潰してしまうという残念な事象は帰国のお子さんを持つ多くのお母様達からもその悩みを伺いましたし,実際に私自身も形は違いますが少し経験したことがあります。今はそのようなことは無くなったと信じているのですが、先日期末テストを行った私のクラスでPeer pressureの表出の仕方こそ違いましたが「え!?」と思ったことがありました。
そのクラスはスピーキングに特化したクラスですので当然ですが期末試験もコンピュータールームで発話を録音して提出する、という試験スタイルでした。いくつか与えられたタスクがあり、お題を与えられた学生たちはこちらの指示通り発話をスタートさせたのですが、与えられた30秒をフルに活用せず、みんな15秒前後話した頃からだんだん声が小さくなり、終了に10秒も残して押し黙ってしまいました。一体何が起こったと思いますか?

自分に対してもっとも辛辣な批評家は自分自身

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早く発話を終わった学生たちから声が出なくなるにつれてクラスが静かになっていくと周りの学生たちは自分のスピーチは終わっていないにもかかわらず声のボリュームを極端に下げたり、途中で発話をやめてしまったりしたのです。通常のクラスではかなり発話させていますし、時にはこちらが「Stooooop talkin!!」と言ってもなかなか静かにならないほど活発なクラスなので「え?どうして」と私は狐につままれたような気持になってしまいました。試験なのでタスクを満たすことは必須なのに、なぜこの学生達は発話をやめてしまうのか。。。

Q-Leapの玉木史恵先生のプレゼンに関するブログで「自分に意識を向けた途端に発話が止まるので意識は常に聴衆に向ける」というコツが話されていたと思いますが、まさにこれがその良い例ですね。玉木先生のブログから引用させて頂くと、
「プレゼンテーションを行う時には、全ての注意(attention)は聴衆に向けられなければなりません。自分の方を振り返る(reflection)と、途端に緊張が始まります。というのは、間違い(mistakes)に容赦のない、最も辛辣な批評家は「自分」だからです。「間違えてしまったらどうしよう」という恐怖は緊張の呼び水になります。自分に向かって話し、自分の世界に入るのはやめましょう。」
ということです。

雑音(他の学生達がわいわい話している状態)の中ではタスクを満たすことを念頭に話せていた学生達が、周りの雑音が小さくなり、自分の声が目立って聞こえて来そうになった途端に極端な小声になったり最悪では発話を途中で諦めてしまいました。数十人が一瞬にして起こしたこのドミノ現象は、まさに「自分に意識を向けた途端に緊張が始まった」という例です。これはPeer Pressureではなく、自分が自分にプレッシャーをかけているだけなのでは?という見方もあると思いますが、結果としてはどうでしょうか。自分の発話に意識が向き、それを他人に聞かれるのを恥ずかしいと思う。その恥ずかしいと思う気持は何処からやってくるのかと考えると、自分に対して一番辛辣な批評家である自分が「発音に自信がない、話している内容や文章の構成に自信がない、だから他の人に聞かれたくない」というのが一般的かと思います。そしてその「自信が無い」の一部の理由はネイティブモデルとの比較から産まれて来ると感じています。一人一人が発話をやめていくことで自分では意図せずに周りの仲間達に無言のプレッシャーをかけていっている様子が私の席からありありと見て取れました。

今回はテストでしたし、録音中でもあったので、途中で指示をすることも出来ませんでした。当然ですがこのタスクに関しては多くの生徒が厳しい点をもらうことになりました。私はとても残念に思ったので、テスト終了後にPeer Pressureという事について少し話をさせてもらいました。語学学習は赤恥青恥無しには決して進まないこと、教室は誰もが心置きなく間違えられる場所であるということです。「教室はまちがうところだ」という絵本がありますが、ここで間違えられないとしたら一体何処で?ですね。そして自分にプレッシャーをかけることはすなわち周りにもプレッシャーをかける結果になることを理解して欲しい、というのが私のメッセージです。

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日本人同士はお互いが話す英語に対して非常に厳しい

では私自身今までそんな経験はないのか、と言われたら大有りです。今は違いますが、まだまだ自分に対して厳しかった頃(笑)日本人の前で英語を話すことが最も緊張することでしたし、気が重かったです。なぜなら日本人がお互いの英語にとても厳しい,というのを肌で感じていたからです。私はこれはネイティブモデルしか知らないことの弊害であると思っています。自分だって間違えるのに他人の間違いにはとても厳しい自分がいて、だからこそ相手も絶対に同じだろうと思うと非常に緊張しました。今は日本人の生徒さんたちの前で英語を話すのが仕事ですから、面の皮も厚くなり、リラックスして話せますが、振り返るとなんと無駄な緊張だったかと思います。誰だって間違えるし、不完全なんです。それを少しずつ磨いていくのが勉強です。お互いが練習しやすい環境を是非作っていきたいですね。私たちの置かれているEnglish as a Foreign Langauge (EFL) の外国語環境では発話練習出来る場が少ないからこそ日本人同士で英語を話す練習をする場はとても貴重だと考えています。お互いを温かい目で励ましあうこと、そして発話の時には自分に意識を向けるのではなく、相手に分りやすく話すことに集中していただくのがひとつのコツだと思います。

散々ELFと言っている私ですが、来週から2週間、ELFとは真逆、英語の本家本元である英国のロンドン大学の音声学(当然イギリス英語)のサマーコース(どれだけネイティブライクを求められるのかドキドキですが)に参加して来ます。教える立場としては出来る限りの精進をしたいというのが私の考えです。またイギリスからのブログをお楽しみに!

 

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浅場 眞紀子

浅場 眞紀子

代表取締役Q-Leap
慶應義塾大学卒 コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士号取得 米穀物メジャーCargill, 石油メジャーBPの外資2社に計10年トレーダーとして勤務。その間ChicagoとNYに3年駐在。 現在企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを手がけている。 その他大学、専門学校でTOEIC SW クラス、TOEIC公開講座などを担当中。 2014年 ビジネス英語研修会社 Q-Leap 設立

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