Dec 8th, 2014

Beyond Native Speakers (9) 英語のセンス


早いものでもうアドベントも第二週です。クリスマスも近くなって来ましたね。

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先日娘と話していた時「センス」という話になりました。

 

日本語で話していたので娘は「生まれつきのセンスは絶対にある!」私は「そんなの無い!」と全く平行線だったのですが、後からよくよく考えると、日本語で話していた事で誤解があったのでは?と思い当たりました。彼女が主張していたのは多分美術や芸術でいうtaste(好み)で、私が話していたのはaptitude (適性)だったのでは。。。 そうであればtasteは確かに存在し、主観的に言えばgood taste もbad tasteも存在します。一方私のほうはaptitudeという前提で話していますから、それは(aptitudeが存在しないとは言いませんが)変えられないものではない、と考えています。学問分野ではlanguage aptitudeというのは研究の対象です。実際にlanguage aptitudeを測定するテストなどもあり、The Modern Language Aptitude Test (MLAT) などが有名です。

 

そんなことがあった前後、読んで感銘を受けた本に水野学さんの「センスは知識からはじまる」がありました。水野さんはグッドデザインカンパニーの代表で多くのヒット商品を世に出して来たデザイナーの方ですが、この本は「*目から鱗」というか「あ、そうそう、これが言いたかったの!」という私の気持を論理的にスカッと説明してくれていて読みながら何度も首を縦に振ってしまいました。

水野さんの本の帯に書いてあること、それがまさに私がずっと思っていたことでした。

 

「”センス”とは、特別な人に備わった才能ではない。それは、さまざまな知識を蓄積することにより「物事を最適化する能力」であり、誰もが等しく持っている。」

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まさにこれ、これを長いこと言いたかったのですがいつも同僚に日本語を直されている私ではこんな論理的な表現にはとてもたどり着けませんでした。水野さん、ありがとうございます。

 

これはそのまま語学学習にあてはまります。水野さんは本の中で「普通をどれだけ知っているかがセンスを磨く唯一の方法だ」とも書いています。まさに I cannot agree more !!!   これ以上同意出来ないというほど同意、です。水野さんは商品開発の立場から発信されていますが、この考え方は普遍的だと思います。「普通」をどれだけ知っているかで「ちょっとセンスがいいものを作れる」のだと思います。ですから自分がセンスを発揮しようと思う分野では常に「普通=基礎」を知る努力を怠らないことです。

 

カタカナ英語のセンス は「生まれつきの才能」やら「好み」やらいろいろな意味が盛り込まれてしまっていて英語のsenseとの違いがよく分りませんが、英語のsenseとは主に感覚のことです。嗅覚、触覚、視覚。。。というようなものからofで繋げれば a sense of humor (ユーモアのセンス)とかa sense of fashion (ファッションセンス)などいろいろ作れます。ポイントは「何の」センスかちゃんと書かないと伝わらないことでしょうか。ただ She’s got a great sense. と言っても何のことか伝わりません。”… of what??” となってしまいます。もし「すごく趣味がいい」と言いたいならShe’s got a great taste.  とtasteを使った方が伝わります。

 

よく聞く生徒さんのつぶやきに「語学のセンスがないから」というのがあります。それを聞くたびに本人には言いませんが「できる努力を十分しないうちからセンス?」と内心思っていました。すみません、怖くって。。。でもそれは裏返せば「誰だってできるようになる」と私が強く信じているからです。毎日の基本の積み重ねでできるようになることはたくさんあります。

 

よく「TOEICの勉強をしても話せるようにならない」という意見も耳にします。でも視点を変えてTOEICスコアを上げるのも「語学センスを磨くために必要な ’普通’ を鍛えることなんだ。」と思っていただければとても意味のあることだと思います。TOEICのスコアを上げても勉強方法によっては話せるようにならないかもしれません。でもTOEICのスコアが十分に無いということはそもそも「普通」が足りないので、例え発話をトレーニングしても上達の限界が見えてしまいます。今まで長くスピーキングを教えていますが、やはりTOEICのスコアの高い人は他のアウトプット(スピーキング、ライティング)に移行した時に伸びしろが違います。そういった自分の経験からも「普通を知り,知識量を上げることが(語学の)センスを身につけることだ。」と言えると思います。知識をその場に合わせて「最適化する能力」こそがセンスだという水野さんの言葉は何にでもあてはまります。

 

 

水野さんは本の中で私がずっとモヤモヤと思っていたことを見事に論理的な言葉にしてくださっていました。
まさに「目から鱗」でした。

 

 

*目から鱗:これが英語の諺だって知っていましたか?聖書からの表現で、熱心なユダヤ教徒だったパウロ(サウロ)はキリスト教徒を迫害していたのですが、あるとき「サウロ、サウロ、なぜ、わたしを迫害するのか」というイエスの言葉を天からの光と共に聞き、その後目が見えなくなります。その後アナニアが神のお告げによってサウロのために祈ると目から鱗のようなものが落ちて、再びサウロの目は見えるようになり、彼はキリスト教発展の基礎を築く聖人パウロとなります。この出来事は「サウロの回心」と呼ばれています。


英語では

Immediately, something like scales fell from Saul’s eyes, and he could see again. He got up and was baptized.

と書かれています。