性別ってなんだ? What is gender?

更新日 : 2019年6月9日

いよいよ来年となった東京オリンピックですが、オリンピック選手の性別判断には長い歴史があるってこと、ご存知ですか?というのも、男女の区別ってそんなにはっきりしていないからです。

遺伝情報での性別 / Genetic factors of sex determination
生物の授業で女性はX染色体を(X-chromosome)2つ、男性はXとY染色体(Y-chromosome)を1つずつ持つと習ったかもしれませんが、実はもっと複雑です。人間の受精卵の初期設定は女性( the default gender of human fertilized egg is female)で、SRY遺伝子 を持つ受精卵は男性になる運命になります。言い方を変えると、性別はXとYでは決まらないのです。さらに性別を複雑にするのがもう一つの遺伝子、DMRT1です。動物実験(animal study)では、DMRT1を失った雄マウスの精巣が卵巣(testis to ovary)に、雌マウスの卵巣が精巣に変化する!という驚きの結果が出ています。つまり、SRYを持つ男子も、DMRT1が働かなくなると性別が変わるかもしれない?のです。

性別判断の歴史 / History of sex verification
NHK大河ドラマ「いだてん」ではまだ語られていませんが、女子オリンピックの歴史は、性別の確認(sex verification)と女性の人権侵害(invasion of human rights)の歴史でもあるのです。

女子が参加し始めた頃は、勝つために女子になりすます男子(male imposters)を防止するために 、女子アスリートに限り女性であるという証明が義務付けられました。ところが国ぐるみの性別詐称(gender doping)が続いたため、1966年には、彼女たち全員に下着を脱いで複数の医師たちに会う、いわゆる「裸の行進(nude parades)」を強制し、1997年から1999年までは X染色体の数を調べる検査(Barr body test)を続けて2対のX染色体を持たないアスリートをスポーツから排除しました。現在はこのような人権無視の検査はなくなった反面、なんと男性ホルモンの代表格、テストステロン(testosterone)濃度で女性であるかどうかを決められるようになったのです。

スポーツでの性別 / Gender in sports
テストステロンは男女ともに分泌しますが、男性が約35 nmol/Lであるのに対し女性は3 nmol/L以下です。ところが、アンドロゲン不応症(androgen insensitivity syndrome)の受精卵は、男性生殖器官(male genitals)を作れないので、出生時に女児の身体で生まれ、法律上は女性(legally female)として育ちます。しかし、遺伝的には男性(genetically male)なので、テストステロンレベルは男性並みです。一方、トランス・ジェンダー女子(trans woman)の場合、遺伝学・解剖学的には男性(genetically and anatomically male)ですが、法律上は女性です。つまり、遺伝子、ホルモンレベル、身体的には男性でも、社会的には女子アスリートが、公平に競技に参加できる環境がオリンピックに求められたのです。そこで登場した苦肉の策(makeshift solution)が、中・短距離走出場者には、男性ホルモンが過去6ヶ月間5nmol/L以下であること、トランス・ジェンダー(transgender)の女子アスリートの場合、男性ホルモンが過去1年間10nmol/L以下であることを義務付けることだったのです。

中高年の性別 / Sexuality in later life
人間は、男女ともに男性ホルモン(androgen)のテストステロンと女性ホルモン(female hormones)のエストロゲン(estrogen)の両方のホルモンを使って成長し生殖活動をします。しかし、中高年(middle-age)になると話しは変わってきます。女性の場合、更年期(menopause)に入ると女性ホルモンがガクンと下がり、テストステロンもほとんど0になります。一方の男性は、年齢と共に増える、男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素、アロマターゼ(aromatase)のおかげで、テストステロンが下がりエストロゲンが上がります。つまり高齢者の場合、奥さんよりご主人の方が女性ホルモンが高い、つまり、ホルモン上は女性同士の「同性婚」!?となる傾向にあります。

男性の女性化 / Feminization of men
実は、アロマターゼは年齢だけではなく、体脂肪(body fat)と共に増加します。つまり、若くても体脂肪が多いと、男性ホルモンが女性ホルモンに変換される確率が上がり、その結果、精子の減少(lowering sperm count)、女性化乳房(gynecomastia or men boobs)、勃起障害(erectile dysfunction)が起こると考えられています。長時間労働や運動不足で男性の女性化が進むと、日本の少子化傾向(downward trend in the birthrate)は止まらないかもしれません。

このように、今や性別は見た目だけではわからない、曖昧なものです。今後あなたが「女のくせに」とか「女はこれだから」などとのたまう男性に出会ったら、胸とお腹を見ながらこう言ってみませんか、「それってあなたのことですか?」

参考文献

  1. Smith et al. The avian Z-linked gene DMRT1 is required for male sex determination in the chicken (2009) Nature volume 461, pages 267–271
  2. Tucker, R. & Collins, M. The science of sex verification and athletic performance (2010) Int. J. Sports Physiol. Perf. 5, 127-139
  3. The Humiliating Practice of Sex-Testing Female Athletes. New York Times Magazine
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有馬 佳代

有馬 佳代

遺伝学・栄養学博士、管理栄養士。徳島大学医学部栄養学科卒、米国アリゾナ大学大学院博士課程終了。 カリフォルニア大学アーバイン校とサンディエゴ校での研究活動を経て、Kayo Dietを設立、栄養指導、料理指導およびレクチャーなどを日米で展開しています。
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