英語と日本語の敬語の作り方

更新日 : 2020年4月1日

コロナウイルスで外出自粛要請が出ている今、皆さんは自宅でどうお過ごしでしょうか。私にとって家でやることは主に仕事、食事作り、読書、それに散歩の4つです。読書に関しては家事をやりながらも本が読めるAudibleで本を「聴いて」いることが多いのですが、最近面白かったのが金田一春彦さんの「日本語を反省してみませんか」でした。私は日本で高校の教育を受けておらず、日本語には全く自信が無いのでこの本は大変勉強になりました。ナレーターの方もとても上手で、ちょっととぼけた感じが最高に可笑しく、くすくす笑いながら読書?聴書が進みました。

この中で金田一先生が日本語の敬語についてたくさん話されていますのでその一部をご紹介しながら英語の場合に当てはめて考えてみました。(内容は少し変えてあります)

素敵な晩餐会で自分から少し遠いところにある塩を取ってもらいたい時どう言うか、という話です。

「塩を取ってください」という普通の言い方をより丁寧にするには日本語でどうしたらよいでしょう。皆さんならどう言いますか?

 

 

 

①塩を取ってくださいませんか

②塩を取ってもらえませんか

③塩を取っていただけませんか

④塩を取っていただけませんでしょうか

恐れ入りますが、塩を取っていただけませんでしょうか

 

 

この①~⑤は日本語の丁寧度の順に並んでいます。この中では⑤が最も丁寧な言い方になります。見事に文末コントロール型ですね。

①は否定疑問文。日本語では否定疑問を使うことで丁寧な表現になるそうです(なるほど!)。

②金田一先生はこの言い方を「可能の否定疑問形」と説明されていました。「取ってもらう」という表現がカギなのでしょうか。

③これは②の「もらう」を「いただく」という丁寧な言い方に変えることで丁寧さを増しています。

④これは③の「否定疑問」を「否定疑問推量」にして丁寧度を増しているそうです。③に「~でしょうか」を加えることで作ることができます。

⑤これは文頭に飾り言葉「恐れ入りますが」を入れることで④をさらに丁寧にしています。

このお話のまとめで金田一先生は「日本語を丁寧にすることは面倒ではあるが、ある程度機械的な作業。文末を丁寧語にしたり、文頭に飾りをつけることで丁寧な言い方にすることができる。」と仰っています。

この「面倒ではあるが、ある程度機械的に操作できる。」というのは英語でも全く同じです。

 

では英語ではどうすれば丁寧になるのでしょうか。

 

「普通の形」を何でスタートするべきかは迷いますが、「依頼、命令」ですので、

Pass me the salt, please. 「塩を取ってください。」

で始めてみることにします。このPass me the salt, please. はpleaseがついてはいますが形は命令形ですので丁寧な言い方にはなりません。(注:相手のメリットになることならば「命令形+please」は丁寧な言い方になります。例:Please have a seat. など)

 

Can you pass me the salt?「塩を取ってくれますか」

Could you pass me the salt? 「塩を取ってもらえますか」

Would you pass me the salt, please?

「塩を取っていただけますか。」

Do you think you could pass me the salt?

「塩を取っていただけますでしょうか。」

Would you mind if I asked you to pass me the salt?

「恐れ入りますが、塩を取っていただけますでしょうか。」

*日本語訳は適当に当てはめたものです。

 

英語は日本語と逆で見事に文頭型ですね。英語では。。。

① 命令形から疑問文へ変換することで丁寧な表現にします。

② ①の疑問文の助動詞を過去形にすることで丁寧さを増します。

③ ②のCouldをWouldにしpleaseやpossiblyなどを入れてさらに丁寧にすることができます。

④ 文頭にDo you thinkなどを入れ「塩を取ってもらえるか」ということを直接聞くのではなく、「取れると思うか」という間接的な表現にすることで依頼を丁寧にします。

⑤ 文頭をWould you mind ifという仮定に変えることでより間接的で丁寧な表現にします。このように文頭に入れて間接的な依頼を作る表現が英語には様々あります。

 

「塩を取ってください」という簡単な依頼に④や⑤のような表現は一般的には必要ないかと思いますが、あくまでも丁寧化のステップとして作ってみました。

 

日本語と英語の敬語の作り方の特徴は簡単にまとめると以下のようです。

 

【丁寧語への変換が起こる場所】

★日本語では圧倒的に文末

★英語では圧倒的に文頭

 

【丁寧語化の最初のステップ】

★日本語では丁寧語化の最初のステップは「否定疑問形(~ませんか)」にすること

★英語では丁寧語化の最初のステップは「疑問形(Can you~?, Could you~?)」にすること

 

【より丁寧さを増すためにすること】

★日本語は主に文末を丁寧語にすることや動詞そのものを丁寧なものに変えることで丁寧さを増す。また、「恐れ入りますが」などの飾り言葉を入れて丁寧にすることもできる。

★英語では文末表現の変更や動詞そのものを変更することはできないので、文頭の表現を変えることで丁寧さを増す。英語でも「恐れ入りますが」のような切り出しの表現、I’m sorry to bother you, but …などを使うとより丁寧になる。

 

最後のオチ

金田一先生は最後に「では、言葉をかけることも憚られるほど目上の方に失礼にならずに依頼するにはどうしたらいいでしょう」という問いがありました。皆さんならどうされますか?

 

 

 

「それはお塩でしょうか」

 

もうここで笑い転げてしまいました。これは英語でも使えるスキルですね!!

これならば単なる疑問文であって依頼には当たらないので失礼にならないそうです。ただし、ただ「そうだと思います」とだけ返されて塩をとってもらえなかった場合はあきらめるしかないですね。これはまさにPragmatics =語用論の世界。「空気が読める」かどうかの世界に入ってしまいます。

英語だったら 。。。

Is that salt?

ちょっとぶっきらぼうすぎたら

Ah … excuse me, do you think that’s salt? The container in front of you?

とでも言うのでしょうか。

言葉は面白い。。。

私のパートナー愛場のこちらの著書「相手を味方につける英会話のロジック」にはこういった表現がたくさん出ています。是非参考になさってください。

 

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浅場 眞紀子

浅場 眞紀子

代表取締役Q-Leap
慶應義塾大学卒 コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL) 修士号取得 米穀物メジャーCargill, 石油メジャーBPの外資2社に計10年トレーダーとして勤務。その間ChicagoとNYに3年駐在。 現在企業のエクゼクティブ担当として数多くのプライベートレッスンを手がけている。 その他大学、専門学校でTOEIC SW クラス、TOEIC公開講座などを担当中。 2014年 ビジネス英語研修会社 Q-Leap 設立
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