食事で時差ボケ予防は国際人の常識だ

更新日 : 2019年2月16日

世界を飛び回るビジネスパーソンにとって時差ボケ(jet lag)は悩みの種です。
例えば成田から直行便で私の住むサンディエゴへ出張されるなら、夕方に離陸して約10時間後には同日の午前中に到着、そのまま会議へ直行することも可能です。でもあなたの身体の概日リズムは(circadian rhythm)は日本時間のままなので、とても100%の状態ではないままで仕事をこなさなければなりません。
というわけで、今回は時差ボケ対策について、2本の論文を引用しながらお話しします。

もう多くの人が実践している時差ボケから解放される方法とは、2008年にハーバード大学から発表された、第2の体内時計(turn on the second internal clock)を発現させて脳内にある体内時計の マスタークロック(the internal master clock)を無力化し、既存の概日リズムをハイジャックする、という論文に基づいています。
マスタークロックは私たちの概日リズムをコントロールしています。

マスタークロックは太陽光などで毎朝リセットされ、24時間の周期で体内活動を制御し、朝起きて、昼間働き、夜寝られるリズムを作ります(The internal master clock controls our circadian rhythms. In response to light and other cues from the environment every morning, it coordinates the functions of different body  systems over a 24-hour period and drives our alertness, daily performance, and ability to sleep)。
時差ぼけは、 脳内にあるマスタークロックが周りの環境にうまく適応しないことで起きます(Jet lag is due to a misalignment between the external environment and the internal master clock in the brain)。
例えば、あなたがアメリカ西海岸出張に行くとすると、16時間の時差を克服しなければなりません(If, for example, you are traveling from Japan to the west coast, you are forced to adjust to an 16-hour time difference)。ところが、マスタークロックは1日におよそ1時間しか変動できないため、短期出張だと帰国後時差ボケを起こすなんてことが起こるのです。

マウスの実験で発見された脳内の第2の体内時計は、実は腹時計でした。本来ネズミは夜行性(nocturnal)なので、餌がいつでも食べられる環境では夜食べて昼間眠るという概日リズムを持っています。しかし餌が乏しい状態が続くと脳内に新たなマスタークロックが発現し、省エネのために現存の概日リズムを停止させることがわかったのです(However, a second “master clock” in mice that can regulate circadian rhythms when food is scarce. In essence, the body’s circadian rhythms are suspended to conserve energy)

もし人間の脳にもネズミと同様の機能があるとするなら、フライト前からフライト中に12−16時間絶食して既存の概日リズムを止めてから到着後すぐ食べることで第2の腹時計を作動させ、現地時間により素早くなれることができるというわけです!(If humans brain has a similar mechanism, a quick reset of circadian rhythms by a 12-to-16-hour fast the day before and during flight and eating as soon as you land may be able to engage the second “feeding” clock and adjust more quickly to the new time zone!)
この方法は、臨床試験で証明されたわけではないのですが、効果的だという証言が多く報道されています(This technique hasn’t been tested in clinical trials, but there are many testimonials to its effectiveness in the media)。
私も日本出張の時には実践していて、フライトの日は 朝9時(日本時間の2AM)に朝食をとり、日本到着後(夕方5時以降)に食事をとるようにして以来、頭痛、便秘、不眠などの時差ボケの典型的な症状は出なくなりました。

実は、日常生活にも時差ボケは潜んでいます。
最近の研究で、脳内のマスタークロック以外にも、すべての細胞と腸内微生物(all body cells and gut microbes)の中に体内時計があり、食べる時間帯(eating duration)によって時計がずれる、いわゆる「代謝の時差ボケ(metabolic jetlag)」の存在が明らかになっています。どうやら遅い夕食や夜中のラーメンが原因で、多くの現代人の食事時間帯は14時間以上に及び、代謝の時差ボケを作り出しているようです。

その解決策として期待されているのが、時間制限食事法(time-restricted feeding (TRF))です。TRFは、毎日の食事を10—11時間に収めることで強固な概日リズムを作り(TRF supports a robust circadian rhythm by meals in a daily 10- to 11-hour window)、それによって肥満を軽減、筋肉量増加、長い睡眠、持久力の増進、炎症防止、心肺機能の老化防止、その他の臨床検査データの改善が期待できる(associated with reduced adiposity, elevated lean mass, longer sleep duration, increased endurance, reduced systemic inflammation, decelerated cardiac aging and improvement in other clinically-relevant biomarkers)というわけです。

通勤時間が長く、残業も多くてとても10時間以内に朝、昼、夕食を済ますのは無理!という方は、食事内容でも代謝の時差ボケを軽減できるのですが、その話は長くなるのでまた別の機会にしましょう。

いつものようにご意見ご感想をお待ちしています。

参考文献
1. Fuller PM, Lu J, Saper CB. Differential rescue of light- and food-entrainable circadian rhythms. Science. 2008; 320(5879):1074-7.
2. Gill S, Panda S. A Smartphone App Reveals Erratic Diurnal Eating Patterns in Humans that Can Be Modulated for Health Benefits. Cell Metab. 2015;22(5):789-98.

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有馬 佳代

有馬 佳代

遺伝学・栄養学博士、管理栄養士。徳島大学医学部栄養学科卒、米国アリゾナ大学大学院博士課程終了。 カリフォルニア大学アーバイン校とサンディエゴ校での研究活動を経て、Kayo Dietを設立、栄養指導、料理指導およびレクチャーなどを日米で展開しています。

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