低脂肪食品がアメリカを肥満大国にした

更新日 : 2019年4月10日

高脂肪食(high fat diet)やコレステロール(cholesterol)の高い食品が心疾患(heart disease)の原因って思っていませんか?実は、高脂肪食を悪者にする考えはアメリカの砂糖業界がハーバード大学の教授を抱き込んで作った偽りの情報だった!!というセンセーショナルな事実が2016年に判明、新聞やニュースで大きく報道されました。

作られた低脂肪食ブーム
砂糖業界は、1967年に3人のハーバード大学の研究者に金を支払い、砂糖と心疾患の関連を軽視し(playing down)、「心疾患の元凶は(動物性食品に含まれる)飽和脂肪である」とする総説論文を発表させたのです。
The sugar industry paid three Harvard scientists in the 1967 to write a review paper playing down the link between sugar and coronary heart disease and promoting saturated fat as the culprit instead.

この3人の研究者は当時の栄養学を牽引する立場にあったので、影響力は絶大でした。以来50年間、低脂肪、低カロリーが健康食の代名詞となり、砂糖と炭水化物ばかりの加工品が市場に広がりました。
それと同時にアメリカでは年々肥満率が上昇、2008年には大人の64%、子供の17%に達しました(アメリカの疾病管理センター発表)。
At the same time, the overweight percentages for the overall US population are higher reaching to 63.8% (adults) and 17% (children) in 2008 (published by US Center for Disease Control).

日本もこの影響を受け、低脂肪食が健康に良いという間違った考えが定着したのです。

低脂肪食が体脂肪を増やす
低脂肪食品には私たちが生きるために不可欠な必須脂肪酸(essential fatty acids)や脂溶性ビタミン類(fat soluble vitamins)が含まれません。低脂肪にこだわるばかりに加工品(processed food)ばかりを食べていると栄養不足(malnutrition)にもなります。さらに、低脂肪食は満足度が低いので、ご飯やパン、麺類などの食べ過ぎの原因にもなります。その結果上昇した血糖は、脂肪細胞(adipose cells)に取り込まれ、中性脂肪(triglyceride)として蓄積していきます。また、肝臓に取り込まれた血糖も中性脂肪として蓄積し、非アルコール性脂肪肝(NASH; nonalcoholic steatohepatitis)を引き起こします。そして、この脂肪肝を予防してくれるのが、なんとコレステロールなのです。

血中コレステロールはコレステロールではない?!
いわゆる善玉と悪玉コレステロールと呼ばれる物は、脂肪や脂溶性分子をコレステロール分子とアポリポタンパク質(apolipoproteins)で複合体タンパク質であり、 コレステロール分子そのものではありません。つまり、悪玉コレステロール(LDL; low density lipoprotein)と善玉コレステロール(HDL; high density lipoprotein)は、比重が違うだけでどちらも生命維持に不可欠な「 脂溶性分子の輸送システム」です。

悪玉コレステロールがないと脂肪肝になる
LDL(厳密にはVLDL、very low density lipoprotein)は肝臓から脂肪を運び出すという重要な使命があり、運び出した脂肪を脂肪細胞に届けることで肝臓を守り、脂溶性物質を色々な細胞に届けて生体機能を守ります。もし肝臓がVLDLを作れないと、脂肪肝を起こし、肝硬変(cirrhosis)へと変化し、皮膚障害や機能障害が起こります。つまり、LDLは「あること」をしない限り悪玉ではない「役に立ついいヤツ」なのです。

善玉コレステロールはやっぱりいいヤツ
では、その「あること」とはなんでしょうか?それは、LDLの表面のアポリポタンパク質が血管と反応して炎症(inflammation)を起こすことです。この反応は、誰の血管でも10代から起こり始め、年齢とともに蓄積して、ついには 血管を詰まらせる動脈硬化(atherosclerosis)に変貌します。じゃ やっぱり悪玉じゃん、って思った方、性急です。ここで活躍するのがHDLです。HDLは、動脈硬化になる前の、くっついちゃったLDLから脂肪を吸い取ってダメージを改善、血管が詰まることを予防します。それ以外にも、HDLは皮膚や臓器で古くなったコレステロールを回収して肝臓に戻す役目があります。だから善玉と呼ばれるのですね。

卵やえびでコレステロールは絶対に上がらない
ここまで書いたように、食品に含まれるコレステロール分子は、LDLに影響しません。コレステロール分子は、私たちの皮膚やホルモンを作るとっても大事な材料なので、足りなくならないように肝臓でリサイクルされます。コレステロール分子は、卵や魚介類に豊富に含まれていますが、私たちの腸にある賢い仕組みによって不必要な量は吸収されません。逆に食事でコレステロールを摂取していないと、健康な皮膚や性ホルモン、脂溶性ホルモンが作れなくなり、皮膚炎、ホルモン異常、免疫力の低下が起こります。

ズバリ、LDLを上昇させる原因は、卵ではなく、肝脂肪の素となる砂糖や炭水化物の取り過ぎ、そして運動不足です。
As a matter of fact, LDL-rising factors do not include eggs but fatty liver causing factors, such as too much sugar and carbohydrate intakes in addition to non-active lifestyle.

循環器疾患にならないために(Cardiovascular disease prevention)
長年良いと言われてきた低脂肪食が、肥満とういうパンデミック(obesity pandemic)をアメリカで生み出したのですね。皆さんも脂肪肝や動脈硬化の予防のためにも、食生活を見直してみませんか?見直し方は、2018年10月のブログ、「カロリーなんて関係ない」https://q-leap.co.jp/blog/calories-do-not-matter/ のTake home messagesをご参考にしてください。

今月のポイント(Take Home Messages in this month)
脂肪肝を作る食生活をしていない限り、LDLは悪玉ではない
(LDL is not a bad cholesterol as long as your diet doesn’t build up fat in the liver.)
◆HDLが充分高ければ、総コレステロール値が高くても心疾患のリスクは高まらない
(High cholesterol cannot be a heart disease risk factor if your HDL is high enough.)

ちなみに、HDLは定期的な運動で上昇し、LDLのおこすダメージは、オメガ3(特に、EPAとDHA)を摂取することでも軽減できます。

いつものようにご意見ご感想をお待ちしています。

参考文献
1. Kearns CE, et al. Sugar Industry and Coronary Heart Disease Research: A Historical Analysis of Internal Industry Documents. JAMA Intern Med. 2016;176(11):1680–1685.
2. How the Sugar Industry Shifted Blame to Fat. The New York Times
3. “U.S. Obesity trends”. Center for Disease Control. Archived from the original on 25 August 2009.
4. Does ‘bad’ cholesterol deserve its bad name? Medical News Today

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有馬 佳代

有馬 佳代

遺伝学・栄養学博士、管理栄養士。徳島大学医学部栄養学科卒、米国アリゾナ大学大学院博士課程終了。 カリフォルニア大学アーバイン校とサンディエゴ校での研究活動を経て、Kayo Dietを設立、栄養指導、料理指導およびレクチャーなどを日米で展開しています。
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