発音矯正の楽しみ


こんにちは。
英語の発音、と聞くと「きれいな発音にしたいです!」という方と「発音より中身。分かってもらえればいいんじゃないの?」という二極に分かれることが多いかと思います。Q-Leapとしては「相手になるべくストレスを与えない英語」を目指しているので発音指導には力を入れているのですが、そうでなくても「発音矯正は楽しいからちょっとやってみません?」というのが今回のお誘いです。
AIの入った発音評価ソフトや書き起こしソフト、Siriなどで自分の発音が一発で認識されると嬉しいものですよね。AIに分かってもらえるということは一応一般的には通じるんだな、と客観的に判断できます。指導でも良く使います。とある発音が上手く認識されない方に、局所的にトレーニングをし、その後でもう一度ソフトにかけると発音が正しくなっているので認識される、それはtangibleな変化を感じられる一瞬です。そして常に進歩は喜びです。このAIの時代は自分の発音を見えるかたちで改善していくことができる素晴らしい時代です。
私は発音矯正に興味があったので、Q-Leapを設立した2014年の8月、ロンドン大学の夏の音声学コース(3週間)に参加しました。参加者のレベルは様々なので事前にグループ分けされて、レベルやバックグラウンドの近い人たちと小さなスタディグループができていました。グループごとにスケジュールに従って様々な教授のクラスを受講するのですが、その中でもひときわ「分かりやすい!!」と感銘を受けたのがDr. Geoff Lindseyのクラスでした。正直他のレッスンは理論が多すぎる。。。と感じていたのですが、Geoffのクラスは非常にプラクティカルでした。そのクラスでは主に彼が口から出す「全く意味が無い英語の音の羅列」をそのまま発音記号で書きとる、という究極のリスニングが行われていました。これは「文脈や背景情報、知識」といったトップダウンの聞き方を完全に排除した音だけの練習です。こういったトレーニングをすると人間がいかに知識に頼ってリスニングをしているかが分かりますし、自分が何ができないのかが恐ろしいほど明確になります(選択肢で解くリスニングなどはどれほど事前にヒントを与えられていることか!)。それに加えて自分の発話で矯正しなくてはならない音の特徴もとてもよく分かります。私にとっては最も衝撃的なトレーニングでした。
「コースが終わってもこの人に習いたい!」と思った私は彼に直接交渉し、Skypeで週1のレッスンを受けることにしました。その後、私が受講していることに興味を持ったパートナーの愛場もレッスンを受けるようになりました。毎回のレッスンでGeoffが教えてくれる様々な知識を是非Q-Leapとして日本の学習者の皆さんに提供したい、と考えて2015年の12月からGeoffを日本に招聘して継続して発音講座を開講しています。今年で6回目の開催となります。
2020年度のQ-Leap主催Dr. Geoff Lindseyの発音講座は4月25日―26日の二日間開催されます。26日のリピータークラスは即日満席になりました。繰り返し受講してくださる皆さんから高い評価を得ていることをとても嬉しく思っています。キャンセル待ちの方もいらっしゃるのでリピータークラスを2日にしたら良いのでは?というご意見もあるのですが、やはりより多くの方に発音矯正の楽しさを知っていただく機会を設けたく、引き続き初めての方のクラスを提供していくつもりです。
4月25日に予定されている発音・リズムのクラスは現時点でまだ少し残席があります。こちらは特に英語の音の本質について専門家から実践的な練習方法を教えてもらいたいと思う学習者の方、そして指導者の方にお勧めです。人数を絞ったクラスですので参加者お一人お一人へGeoffからのフィードバックもあります。発音の専門家から指導を受けたいと思われる皆様、是非楽しくて新しい発音の世界を覗いてみてください!
Geoffの指導は毎回目から鱗です。
4月25日 (土) Geoff Lindsey 発音・リズム講座
https://geoff2020day1.peatix.com/view
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Dr. Geoff Lindsey 略歴
ロンドン大学 (UCL) 名誉講師。UCLが毎夏開催する英語音声学サマーコース(SCEP)主任指導員。音声学の修士及び博士課程をカリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)にて修了。International Phonetic Alphabet (IPA)の改訂、オックスフォード英語辞書編集などにコンサルタントとして勤める。また、犯罪科学捜査で使われる発話分析官でもあり、テレビドラマの脚本家としてのキャリアも長い。EU圏での講演多数。
リンジー博士のHP
Dr. Lindseyが指導する有気音Aspirationについてのビデオ
「CUBE Pronunciation Dictionary」
「May the quiz be with you」
著者について

浅場 眞紀子
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