アメリカ大統領選から学ぶ英語スピーチ力 Vol. 2 ―ストーリーを語る効果 クリントン と サンダーズの共感を生むスピーチ


前回に引き続き、「アメリカ大統領選から学ぶ英語スピーチ」と題してお届けします。Vol. 2の今回は、民主党候補の二人のスピーチから、Storytelling(ストーリーを語る)効果についてお話します。
■ Hillary Clinton (ヒラリークリントン)
まずは、女性層、黒人層含め多様な層から、その政治経験からも支持を集め、これまでのネバダ、サウスキャロライナでの予備選でも勝利したのヒラリー・クリントンのStorytellingを見てみましょう。
“… so when I see this beautiful little girl there, I think about my granddaughter. She has exactly that same toy, that little giraffe…….and I think about I want the best for her. But that’s not enough. I want the best for all our kids. I want the best for everybody in this county…. ”
客席に座っている若いお母さんと赤ちゃんを見ながら、自分自身にも娘がいて孫がいて、その赤ちゃんが手に持っているキリンのぬいぐるみとまったく同じものを自分の孫も持っていると話します。そして彼女の最大の幸せを切に願うのと同じように、アメリカ国民すべての幸せを強く願っていることを伝えます。動画→https://twitter.com/HillaryClinton/status/701830242680180736
もとファーストレディーであり、国務長官である政治的な実績だけではなく、そもそも「母であり、祖母である」という立場が、女性をはじめ家族を大切に思う人々の心に寄り添うスピーチになっています。
■ Bernie Sanders (バーニー サンダーズ)
次に、民主党のもう一人の候補者、Bernie Sandersについて。彼は選挙戦でWall Streetのtop 1%の富裕層のみが国の利益を得ないfair国に、という弱者の味方、社会主義的なスタンスで知られています。公立大学の授業料を無料に、1時間当たりの最低賃金を50ドルまで引き上げようなどを訴え、若者を中心に票を集めました。彼のスピーチの中での「Storytelling」に注目してみましょう。
”I am the son of a Polish immigrant who came to this country speaking no English and having no money……… the truth is that neither one of my parents could ever have dreamed that I would be here tonight standing before you, as a candidate of president of the United States. ”
自分の親がポーランドからの移民であること、貧しいブルックリンのアパートメントで育ったこと、そんな自分が大統領に立候補していることを当時両親は夢にも見なかっただろうと語った上で、これこそ(どんな人でも夢をかなえられる)がアメリカが守るべき姿と訴えます。(実際のスピーチは、こちらのビデオの24:50~26:10あたり https://www.youtube.com/watch?v=F8qWIByQZ3w )
■ストーリーを語る効果
パブリックスピーチの専門家でSteve Jobsのプレゼン分析などでも有名なCarmine Galloは、Storytellingの効果として以下の3つを挙げています。
Emotional- touch by heart (感情的 -ハートで触れる)
Novel- teach me something new (今までにない -新しいことを教えてくれる)
Memorable – present content in ways I’ll never forget (記憶に残る -決して忘れない形で内容を見せてくれる)
”Your missions is to build trust.” -スピーチをする人のミッションは、聴き手と信頼関係を築くことと述べています。
皆さんもご自身のプレゼンにストーリーを効果的に盛り込んで、聴き手の心をしっかりつかんでくださいね!
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愛場 吉子
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