Jun 30th, 2023
ビジネスに役立つ経済金融英語 第22回: さまざまな「グリーン(Green)」
第18回では「グリーンウォッシュ(Greenwash:表面だけの環境対策)』を取り上げた。ことさらに説明はしなかったが「グリーン〇〇」とは要するに「環境関連の〇〇」あるいは「環境に配慮した○○」といった漠然とした意味である。
今回は、そのような表現の中から、単独で用語だけではピンとこない、あるいは誤解を招きやすいものをいくつか紹介しよう。ただし、たとえば「環境に優しい」と一口に言ってもその含む範囲は広く、意味も使い方もさまざまであり、時間とともに変化してきたものも存在する。「グリーン・・・」とついていてもネガティブな意味の経済用語や、時流に乗るべくつくられた和製英語(?)もある。混乱を避けるためにも、背景となる考え方を少しでも理解することが重要だ。
まずは基本中の基本から見ていこう(本稿における辞書や記事の翻訳、太線、下線、注などの挿入は、特に断りのない限りすべて鈴木)。
1. 辞書の定義:Green=環境保護の、環境負荷をかけない
Green
connected with the protection of the environment; supporting the protection of the environment as a political principle(環境保護に関連した、政治的な原理として環境保護を支持する。)
- green energy (グリーン・エネルギー)
- green politics(グリーン政策)
- Try to adopt a greener lifestyle.(もっと環境に優しい生活スタイルを試してみよ)
- the Green Party(緑の党)
(the Oxford Advanced Learner’s Dictionary)
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/green_1?q=green
(2)グリーンコンシューマー(Green Consumer):商品を購入する際に、価格や性能、品質、安全性、ブランドといった視点に加え、環境に優しい視点や製法を生産されているかどうかを重要視する消費者のこと。英英辞典の説明は次の通り。
green consumer
a customer who wants to buy things that have been produced in a way that protects the natural environment:(自然環境を保護する方法で製造された物品を購入したい顧客)
The typical green consumer will only buy things that are environmentally friendly.(典型的なグリーンコンシューマーは、環境に優しいものだけを購入する。)
(Cambridge Dictionary)
https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/green-consumer
(3)グリーンツーリズム(Green Tourism):「環境に優しい観光」という日本語では漠然として分かりにくいかも。日本語と英語の説明をご紹介する。②では、この言葉の意味が変質してきたことが分かる。
①グリーンツーリズムとは、農山漁村に滞在し農漁業体験を楽しみ、地域の人々との交流を図る余暇活動のこと。長期バカンスを楽しむことの多いヨーロッパ諸国で普及した。
(JTB総合研究所)
https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/green-tourism/
②The concept of green tourism has evolved over time and is presently used with different meanings. The original one, spread during the 1980s, stands for small-scale tourism which involves visiting natural areas while minimizing environmental impacts. In this line, green tourism has been used interchangeably with such concepts as ecotourism, nature tourism, and rural tourism.(リーンツーリズムという概念は時間とともに進化してきており、現在では様々な意味で使われている。元々は1980年代に広まったもので、自然エリアを訪れる小規模な観光を指し、環境への影響を最小限に抑えることを意味する。この意味合いで、グリーンツーリズムはエコツーリズム、自然観光、農村観光という概念と同義語として使われてきた)
(SpringerLink :ドイツの総合科学出版社シュプリンガーグループの電子情報サービス)
https://link.springer.com/referenceworkentry/10.1007/978-3-319-01384-8_264
(4)グリーン調達(Green Procurement)/グリーン購入(Green Purchase):製品の製造元や原材料に注目した概念。製品に注目する場合、製品の提供者に注目する場合、そのような製品や業者を選択する行為全体を指す場合がある。IT用語辞典(日本語)と環境省ホームページ(英語)から。
①グリーン調達とは、企業などが製品の原材料や部材を調達するにあたり、環境負荷の低い製品を選択すること。特に、条約や各国の法律などで規制されている特定の化学物質を含まない製品や、製造工程で有害化学物質を使用・排出しない製品を優先的に選択すること。
(中略)
似た概念として、主に国や自治体、消費者などが最終製品を購入する際に環境負荷の低い製品を積極的に選ぶことを「グリーン購入」というが、グリーン調達をグリーン購入の同義語として用いることもある。
(IT用語辞典)
https://e-words.jp/w/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E8%AA%BF%E9%81%94.html
②What is Green Procurement?(「グリーン調達」とは何か?)
Green procurement is defined as a practice whereby purchasers seek to procure goods and services with reduced environmental loads throughout their life cycle with consideration of their necessity, from suppliers who make constant efforts to be environmentally conscious.(グリーン調達とは、購買者がその必要性を考慮しつつ、ライフサイクル全体で環境負荷の少ない商品やサービスを、環境に配慮した努力を続けるサプライヤーから調達するという行為と定義されている)
By making consumer behavior environmentally conscious, green procurement can encourage suppliers to develop products with low environmental loads, and convert the entire economic activities to more eco-minded ones.(グリーン調達は、環境に配慮した行動を消費者に取らせることで、サプライヤーに環境負荷の低い商品の開発を奨励し、経済活動全体をより環境に配慮したものへと変えることができる)
(環境省)
(5)グリーンインフラ:自然環境を戦略的に活用した施設の構築。①辞典(日本語)と②欧州委員会(European Commission)のホームページ(英語)から。②ではその目的が言及され、具体的な事例も紹介されている。
①グリーン‐インフラストラクチャー【green infrastructure】
都市計画において、天候・土壌・植物など自然のはたらきを積極的に活用して道路や施設などをつくること。グリーンインフラ。
[補説]例えば、緑化公園を設けてヒートアイランド現象を緩和させる、人工湿地帯を設けて洪水を防止するなど。
(『デジタル大辞泉』)
https://kotobank.jp/word/グリーンインフラストラクチャー-1690659
②Green infrastructure has been defined as “A strategically planned network of natural and semi-natural areas with other environmental features, designed and managed to deliver a wide range of ecosystem services, while also enhancing biodiversity.” Such services include, for example, water purification, improving air quality, providing space for recreation, as well as helping with climate mitigation and adaptation. This network of green (land) and blue (water) spaces improves the quality of the environment, the condition and connectivity of natural areas, as well as improving citizens’ health and quality of life. Developing green infrastructure can also support a green economy and create job opportunities.
(グリーンインフラは、「自然や半自然地域と他の環境特性を組み合わせて戦略的に計画されたネットワークで、多様な生態系サービスを提供し、同時に生物多様性を強化するように設計・管理されているもの」と定義されている。そのようなサービスには水の浄化、大気の質の改善、レクリエーションのためのスペースの提供、そして気候変動の緩和と適応の支援などが含まれる。この緑(土地)と青(水)による空間ネットワークは、環境の質、自然地域の状態と接続性を改善し、市民の健康と生活の質も向上させる。グリーンインフラの開発はまた、グリーン経済を支援し、雇用機会を創出することも可能である。)
(欧州委員会)
(6)グリーンIT:大きく分けて、ITによるグリーン化(Green by IT)とITそのもののグリーン化(Green in(またはof) IT)の二つの意味があるようだ。①は日本の情報処理学会の辞典から。②はスイスのバーゼルに本拠を置く学術出版社MDPIに掲載された学術論文の概要(abstract)である。
①IT製品製造時の有害物質含有量の最小化,輸送に伴う温室ガスの排出削減,リサイクルへの配慮など,環境全般をカバーする範囲の広い運動となっている。グリーンITは,ITのグリーン化(Green of IT)と,ITによるグリーン化(Green by IT)からなる。Green of ITは,IT分野におけるエネルギー利用効率の改善などを目指す。ここでは,ハードウェアそのものの効率化だけではなく,仮想化技術を用いたハードウェアの集約化などの分野も注目されている。Green by ITは,ITを活用して他分野のエネルギー利用効率の改善やモノの生産・消費の効率化・削減,人・物の移動における効率化に貢献しようとする。
(『ISディジタル辞典-重要用語の基礎知識-第二版』© 2012, 2019 一般社団法人情報処理学会、情報システムと社会環境研究会編)
https://ipsj-is.jp/isdic/1178/
②Over the last few years, Green IT has been defined in a variety of ways and from different points of view. Among these definitions, one of the best refers to Green IT as “the study and practice of design, manufacture and use of hardware, software and communication systems with a positive impact on the environment”.(過去数年間で、グリーンITは様々な視点から、様々な方法で定義されてきた。中でも最も優れた定義の一つは、Green ITを「環境に良い影響を与えるハードウエア、ソフトウエア、通信システムの設計、製造、使用の研究と実践」としている)
Green IT has thus emerged, its goal being to bring the field of sustainability closer to IT. In doing so, it aims to reduce or minimize the environmental impact it entails, and even proposes the utilization of IT to optimize the use of resources in other areas. This follows the idea provided by Erdélyi, in which Green IT is identified from two perspectives.(こうして、持続可能性分野のITへの融合を目標としてグリーンITが登場した。グリーンITは、環境負荷の削減や最小化を目指すとともに、他分野での資源利用の最適化するためのITの活用までも提案している。これはエルデイリの提供する考え方に従っている。エルデイリによると、グリーン ITは次の二つの視点から理解することができる)
・Green by IT: in which IT is understood as an enabler, providing the tools needed to allow tasks of diverse nature in diverse areas to be carried out in a way that is sustainable for the environment.(ITによるグリーン化:ITを「イネーブラー(実現者)」、つまり多様な分野における様々な性質のタスクを環境に負荷をかけずに実現するための手段とみなす考え方である)
・Green in IT: in which IT is understood as a producer; that is, where IT itself has an impact on the environment due to energy consumption and the emissions it produces, this impact must therefore be reduced.(ITのグリーン化:ITを(環境負荷を与え得る)生産者とみなし、IT自体がエネルギー消費と排出物により環境への影響を与えるので、その影響を減らす必要がある)
(“A Governance and Management Framework for Green IT” (「グリーンITのガバナンスと管理のためのフレームワーク)by J. David Patón-Romero, Maria Teresa Baldassarre, Mario Piattini and Ignacio García Rodríguez de Guzmán)
(7)グリーン投資(Green Investment)、グリーン預金(Green Deposit)、グリーンローン(Green Loan)、グリーンボンド(Green Bond:環境債):いずれも資金使途が環境に配慮した内容になる資金の調達/提供を意味する。これらの金融用語は、関連用語も含め別の回に取り上げる予定なので、最も包括的なグリーン投資について触れておこう。
What Is Green Investing?(グリーン投資とは何か?)
Green investing seeks to support business practices that have a favorable impact on the natural environment. Often grouped with socially responsible investing (SRI) or environmental, social, and governance (ESG) criteria, green investments focus on companies or projects committed to the conservation of natural resources, pollution reduction, or other environmentally conscious business practices.
(グリーン投資は、自然環境に良い影響を及ぼすビジネス慣行を支持することを目指す。これはしばしば社会的責任投資(SRI)や環境、社会、ガバナンス(ESG)投資と同カテゴリーに分類されることが多く、天然資源の保存、汚染の削減、あるいは環境意識の高いその他のビジネス慣行に専念する企業またはプロジェクトに焦点を当てる。
(中略)
Some investors buy green bonds, green exchange-traded funds (ETFs), green index funds, green mutual funds, or hold stock in environmentally friendly companies to support green initiatives. While profit is not the only motive for those investors, there is some evidence that green investing may mimic or beat the returns of more traditional assets.
(一部の投資家は、環境保全活動を支援するためにグリーンボンド、グリーンETF(上場投資信託)、グリーンインデックスファンド、グリーン・ミューチュアル・ファンドを購入したり、環境に優しい企業の株を保有したりする。これらの投資家にとって、利益は唯一の動機ではないものの、グリーン投資がより伝統的資産のリターンと同等かそれを上回る可能性があるという証拠もある。
(“Guide to Green Investing”, Investopedia)
「グリーン〇〇」でも、我々にとって好ましくない意味の経済現象を意味する用語も紹介しよう。
(8)グリーンフレーション(Greenflation):グリーン化に伴う物価高のこと。英語の辞書で定義を。英文記事でこの言葉の使われ方を見る。
① 『コリンズ英語辞典』の定義
greenflation
New Word Suggestion(新語の提案)
a sharp rise in the price of materials, minerals, etc, that are used in the creation of renewable technologies(再生可能技術の開発に使用される材料、鉱物などの価格高騰)
(© Collins 2023)
https://www.collinsdictionary.com/jp/submission/24485/greenflation
② 欧州ニュースチャンネル「ユーロニュース」の記事
Vaibhav Chaturvedi, a fellow at the Council on Energy, Environment and Water (CEEW), sees “greenflation”, or the costs associated with going green, as a concern, especially in the short-term.
(エネルギー、環境、水に関する評議会(CEEW)のフェロー、ヴァイバヴ・チャトゥルヴェディ氏は、「グリーンフレーション」、すなわち環境保護への取り組みに伴うコストが、特に短期的には懸念事項であると指摘している)
“Underlying commodity prices are rising everywhere in the world,” he said.
(「環境保護に必要な原材料価格が世界中で上昇しているのです」)
Prices of metals such as tin, aluminum, copper, nickel-cobalt have risen by up to 91 per cent this year. These metals are used in technologies that are a part of the energy transition.
(スズ、アルミニウム、銅、ニッケルコバルトなどの金属の価格は年初来で最大で91%上昇した。これらの金属は、エネルギー転換の一部を担う技術に用いられている。)
(”What is ‘greenflation’ and is it putting renewable energy at risk?” By Divya Chowdhury with Reuters. UK Online Report Business News. euronews. Updated: 22/11/2021)(「グリーンフレーションとは何か、それは再生可能エネルギーを危険にさらしているのか?」、ディヴヤ・チョウダリー、ロイターとの共同配信、英国オンラインレポート「ビジネスニュース」ユーロニュース。2021年11月22日最終更新)
最後に、おそらく日本のマスコミでは現在最もバズっている(流行っている)「グリーン関連用語」を一つ紹介しておく。
(9)グリーントランスフォーメーション(Green Transformation:GX)
まずは6月24日の日本経済新聞「経済論壇から」の記事を紹介する。
GXと再生エネルギー
GX(グリーントランスフォーメーション)推進法が成立した。政府はGX基本方針に基づき、今後10年間で20兆円の「GX経済移行債」という国債を発行し、GXに向けた投資促進のために支出するとともに、炭素に対する賦課金や排出量取引による収入で50年度までに完済する予定としている。千葉商科大学教授の小林航氏(週刊エコノミスト6月13日号)は、この取り組みに期待を寄せる。
(慶応義塾大学教授 土居丈朗「生成AIと人間の違いは」 経済論壇から 2023年6月24日付日本経済新聞)*有料記事です。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72151990T20C23A6MY6000/
GXとは何か、については経済産業省のホームページに詳しい。
GXとはグリーントランスフォーメーションの略。簡単に言うと、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のことです。
現在、人間が生きるため、豊かな生活を送るためのさまざまな活動のエネルギー源は、石油や石炭などの化石燃料が中心です。化石燃料は、消費するときに二酸化炭素をたくさん排出しますが、地球温暖化の最大の原因となっているのが、この二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスです。
化石燃料に頼らず、太陽光や水素など自然環境に負荷の少ないエネルギーの活用を進めることで二酸化炭素の排出量を減らそう、また、そうした活動を経済成長の機会にするために世の中全体を変革していこうという取り組みのことを「GX」と言っています。
(「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?」METI Journal online 経済産業省)
そして、経団連(日本経済団体連合会)が主催し、G7各国の経済界代表が一堂に会する「B7東京サミット」では広島サミットに向けて次のような「B7東京サミット共同提言」が発表された(なお、外務省のホームページによると、「B7」とは「ビジネス(Business)」の頭文字である「B」をとって、「Business7(略称としてB7)」と呼ばれ、G7に対して、G7各国の経済界の関係者が政策提言を行っている。日本では、経団連が代表団体を務めているとのこと。https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page1_001617.html )。
B7東京サミット 共同提言(英語の正文と日本語訳:ともに経団連ホームページ)
III. Green Transformation
A virtuous circle between the economy and the environment can only be achieved through green transformation, a transformation of the entire economy and society. The G7 countries must make integrated efforts towards the policy objectives of tackling climate change, ensuring energy security, transitioning to circular economy, and potentially achieving nature-positive outcomes. We must simultaneously address three issues, namely, decarbonization, energy security, and geopolitical stability. Without this balanced approach, the global economy will continue to decouple.
Ⅲ.グリーントランスフォーメーション
経済と環境の好循環は、経済社会全体を変革するグリーントランスフォーメーションを通じてのみ実現可能である。G7各国は、気候変動に対処し、エネルギー安全保障の確保と循環経済への確実な移行を図ると共に、できる限りネイチャーポジティブ(自然再興)な結果を達成するという政策目標に向けて、統合的に取り組まなければならない。我々は、脱炭素化、エネルギー安全保障、地政学的安定という3つの課題に同時に対処しなければならない。これらのバランスの取れたアプローチをとらない限り、世界経済のデカップリング‘(註:二極分化)*が進行し続けることになる。
(正文:https://www.keidanren.or.jp/en/policy/2023/028.html#p3
日本語訳:https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/028.html#p3)
*「デカップリング」にご関心のある方は「チャーリーの金融英語 「二つの『デカップリング』(前編)(後編)」をご参照ください。
ところが、日本の政財界によるこれだけの意気込みにもかかわらず、GXは次のような憂き目に遭ってしまう。
まず、今年4月に札幌市で開かれた主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合に関するブルームバーグの記事。
札幌市で開かれていた主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合が16日、閉幕した。日本政府が頻繁に使用してきた「グリーントランスフォーメーション(GX)」という言葉は国際社会に広く浸透するには至らず、共同声明に「GX」の二文字は盛り込まれなかった。
政府が作成した2月時点の同会合の共同声明案では「Green Transformation(GX)」との表記があったが、各国との調整が一巡した4月上旬の原案では、「グリーントランスフォーメーションとの言い回しは引き続き協議」とのただし書きが現れる。日本の造語に対し、各国が必ずしも前向きな姿勢ではなかったことがうかがえる。
結局、札幌会合で16日に採択された共同声明では「a green transformation」と一般名詞に表現が変わり、GXの二文字も消えた。
もともと、GXは英語で伝わりにくい一面があった。経済産業省は、英語圏ではトランスという接頭語をXで代用することがあるとしているが、「トランスフォーメーション=X」との図式は日本以外でそれほど浸透していない可能性がある。日本の脱炭素政策をGXと表現しても、海外諸国に正しく伝わるかは不透明だ。
(「共同声明から消えた「GX」、国際社会に浸透せず-G7札幌会合」梅川崇 2023年4月17日 ブルームバーグ)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-16/RT53UZT0G1KX01
・・・そして6月に開催された広島のG7サミットでは、
広島市で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、日本政府は独自の脱炭素戦略「グリーントランスフォーメーション」の略語「GX」の大文字を首脳宣言に盛り込むことにこだわった。しかし各国の賛同は得られず大文字の挿入は見送られた。
最終的には小文字の「a green transformation」という一般名詞の表記が反映されるだけにとどまった。
日本政府内には「国際的に『GX』の文言が認知されれば、政策を進めやすくなる」(省庁幹部)との思惑がある一方、各国が慎重なのは、日本の「GX」に懐疑的だからだ。その柱の一つ、石炭火力発電所でのアンモニア混焼についても、首脳宣言では「発電での利用を検討する国があることに留意する」との表現にとどまった。アンモニア混焼を推進するのはG7では、石炭火力の廃止時期を示していない日本だけで、石炭延命策との批判が強い。大文字か小文字かの対立は実は根深い。
(「深層真相 G7宣言から消えた「GX」 日本固執も支持広がらず」『週刊エコノミスト』2023年06月20日号」)©Mainichi Shimbun Publishing Inc.*有料記事です。
https://japanknowledge.com/psnl/display/?lid=7001020230620013013002
要するに、「グリーントランスメーション(GX)」という一種の「和製英語」は国際舞台では日の目を見なかった。はっきり言えば「ボツ」になったのである。
以上、本日ご紹介したグリーン関連用語についてその背景を復習いただくとともに、Green Transformationだけは特に、外国人との会話で使用する際には十分な注意を払っていただきたい。
ではまた来月!